兵庫県立生活科学研究所                               テストリサーチ


ヘアカラー容器の破裂

 平成15年5月末に、地下鉄駅構内のゴミ箱に捨ててあったヘアカラーの容器のフタが飛び、残っていた液が噴き出して、近くを歩いていた女性の目に入るという事故がありました。密封された容器中でガスが発生したことが原因と考えられます。

危険性を確認するために、7種類のヘアカラーを試買して再現テストを実施しました。

 

薬剤の化学反応で容器が膨張・破裂


 液が噴き出したヘアカラーは、付属のプラスチック容器に2種類の薬剤を入れ、よく振り混ぜてから使うタイプのものでした。複数の薬剤を混ぜて使用するタイプのヘアカラー(永久染毛剤)は、酸化剤(過酸化水素)とアルカリ剤が混ざることで化学反応を起こし、徐々に酸素を発生します。

このため残った薬剤を容器に密封したまま放置しておくと、発生した酸素が容器の中にたまり続けるため、容器が膨張して破裂したり、わずかな衝撃でフタが飛び、中の薬剤が噴出することが考えられます。

 

中の薬剤が広い範囲に噴出

複数の薬剤を混ぜて使用するタイプのヘアカラー7種類を試買し、それぞれ使用法のとおりに容器中で薬剤を混ぜて(写真1)フタをし、立てたまま放置しておきました。

最も膨張が早かった商品は、放置後40分で容器が膨張し、底が丸くなって倒れました。数時間すると他の商品も同じように膨張し、明るい色に染まる商品ほど早く膨張が進みました(写真2)。

明るい色に染めるヘアカラーは、より強い脱色作用を必要とし、酸化剤やアルカリ剤の濃度が高いため、酸素の発生も急激に進んだと考えられます。

24時間後には、膨張の最も早かった商品の容器の一部が裂け、中にたまっていた酸素が噴き出しました。フタと容器の間からわずかに中の薬剤が漏れていた商品もありました。

すべての商品のフタを開けてみたところ、容器の膨張の有無・程度にかかわらず、ほとんどの商品は中の酸素や薬剤が勢いよく噴き出しました。薬剤が最も激しく噴き出したものは、3m四方にまで飛び散りました(写真3)。細長い口のついた容器では中の薬剤が細く直線的に噴き出し、45度の角度で約7m先まで飛び散りました。

 

わかりやすい使用上の注意と製品の工夫が必要


今回のテストで、使用後に残ったヘアカラー薬剤を、容器に密封したまま置いた場合の危険性が確認できました。

テストに用いたすべての商品の容器に、「残った薬剤はそのままにせず、洗面所などで水を流しながら捨てる」などの注意表示がされていましたが、大変見づらいものもありました。注意表示に気づかずに、余った薬剤を、密封したまま保存したり、容器ごと捨てることは十分考えられます。そのような取り扱いミスがあった場合でも安全性を確保するために、容器とフタにすき間をあけて、酸素が充満せずに抜け出る構造にしている商品もありました。

消費者が注意書きをよく読んで、正しく使用することはもちろんですが、使用ミスをカバーする製品設計上の工夫も必要です。

当研究所では、わかりやすく表示することや、扱い方を誤った場合でも安全性が保たれるように容器の工夫をすることなどを、日本ヘアカラー工業会に要望しました。


 
写真1  容器に薬剤を入れる

写真2  膨張したヘアカラー
写真3  薬剤が噴出した瞬間