ホームセンターなどでエアゾール式の消火用具が販売されています。見た目にも手軽に使えそうですが、実際に使用するのは火災の発生時であり、使い勝手や消火性能は、そのときにならなければわかりません。県内で市販されていた6品(1,554円〜5,250円)を対象品とし、緊急時に効果的に使えるかどうか、実用性を調べました。
天ぷら油火災が消せないものがあった
建物火災の原因で最も多いのが「こんろ」ですが、その中でも多いのが天ぷら油火災です。そこで天ぷら油火災を想定し、鍋の種類と油の量、消火開始時の油温など、様々な条件下での消火テストを実施しましたが、「適応火災」として「天ぷら油火災」が図示されていたにもかかわらず、1本全量噴射しても消火できなかったものが2品(いずれも代替フロンガス(HFC-227ea、FM200)を消火薬剤として使用)ありました。実際に発火した時に消えないと危険です。
消火薬剤によって消火特性に違い
テストした6品を消火薬剤の種類で分けると、気体(2品)、液体(3品(そのうち泡1品))、粉末(1品)の3種類に分けられます。今回の消火テストでは、それぞれの消火特性に違いがあることがわかりました(表1、写真1、2)。
使用上の注意と製品の改善が必要
モニターテストでは、炎が小さい火元に対しては、至近距離まで近づいて噴射する傾向がみられ、そのため火柱が大きく上がった時や、油が飛び散る時など危険な場面がみられました。消火の際は必ず1〜2メートル離れたところから噴射しましょう。
また、殺虫剤など他のエアゾール商品に形が似ていたり、キャップが開けにくいなど、火災時のパニック状態では支障が出る問題も見つかりました。使用上の注意はもちろんですが、消火特性を踏まえた分かりやすい注意表示やパニック時でも使いやすく見分けやすいデザインなどへの改善も望まれます。
表1 消火薬剤別の天ぷら油火災消火特性
気体(No.1・2) |
液体(No.3・4・5) |
粉末(No.6) |
・油の冷却効果が小さく、消火できなかった ・周りが汚れない |
・油の冷却効果が大きく、消火能力が優れていた ・噴射直後には油が飛び散り、火柱が大きく上がった |
・素早く消火できたが、油の冷却効果が小さかった ・噴射範囲が大きい反面、火元が小さい場合は狙いにくく、十分量が油に入らないため、再発火したケースもあった ・周りが粉で汚れる |
本テストの結果を踏まえ、消防庁、公正取引委員会に改善のための措置依頼や要望を行いました。
なお、一定の消火能力を満たすものには、NSマーク(写真3)が貼り付けられています。このマークは購入の目安の一つとなります。
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
写真1 試験対象品
写真2 消火状況