洗濯乾燥機の使用性と省エネルギー性

最近、1台で洗濯から乾燥までできる洗濯乾燥機が注目されています。

洗濯乾燥機には、従来の全自動洗濯機同様、「ドラム式」と「うず巻式」があり、それぞれの洗濯方法の特徴を生かしながら乾燥機能を付け加えることで、商品開発に拍車がかかっています。大手各社の製品が出揃ったのを機に、使用性(使い勝手)や省エネルギー性などのテストを行いました。2003年9月〜2004年2月実施)


 

◆ テストした5機種 ◆

表

角丸四角形: ドラム式・・・ヨーロッパで主流、洗濯物を上から下へ落としたたき洗いをする。
うず巻式・・・日本で主流、洗濯槽の底のパルセータの水流で洗う。

 

【使用性】

11名の主婦モニターに、次の7つの課題を実行してもらい、課題を達成できるかどうか、できる・できないにかかわらずエラーは何回あったかなどを見ました。また、課題ごとに操作性を評価してもらいました。

 

課題1

取扱説明書を見ないで、洗濯から乾燥までを行う。

課題2

取扱説明書を見て、洗濯から乾燥までを行う。

課題3

取扱説明書を見て、洗濯の途中で、タオルを追加する。

課題4

取扱説明書を見て、濡れたワイシャツを脱水する。

課題5

取扱説明書を見て、糸くずフィルターを掃除する。

課題6

取扱説明書を見て、乾燥フィルターの掃除をする。

(うず巻式のみ)

課題7

取扱説明書を見て、乾燥の途中で、ネットに入った洗濯物を取り出す。

 

◆ 「洗濯だけ」か「洗濯から乾燥まで」かの見分けが鍵 ◆

洗濯乾燥機を操作する5つの課題〔課題1、2、3、4、7〕で、すべての課題をすべてのモニターが達成できたのは3、5で、No.1、2、4は課題によって達成できない人が延べ55人中、13人〜14人いました。

テキスト ボックス: 課題を達成できなかった人グラフ

図1 操作課題の達成できなかった人数(課題1,2,3,4,7)

角丸四角形: 【課題達成の評価基準】
各課題をモニターが自力で操作し、「モニターが課題を達成することを断念した」「モニターが操作を終了したとしても、洗濯乾燥機が課題どおりに動作しなかった」場合、「達成しなかった」ものとして判定した。

 

 

 

 

 

 


課題1と2では、電源を入れた直後の状態が「洗い〜脱水」のコース選定になっている機種(No.2、No.4)は、乾燥まで行うにはコースを変更する必要があるため、「洗い〜乾燥」のコース設定になっているものより課題達成率が低くなりました。

なお、3機種は洗濯から乾燥まで行うための専用ボタンを設けていますが、名称は「洗濯乾燥」(No.1)、「洗乾」(No.4)、「洗・乾全自動」(No.5)と各社まちまちです

機種によって操作方法や名称が異なると、使用者は戸惑います。操作概念を統一するなど、初めて使う人でも間違いなく使える、誰もが使いやすい操作性が求められます。

 

◆ エラー回数は機種により大きな差 

洗濯乾燥機を操作する課題(課題1、2、3、4、7)の平均エラー回数を合計すると、エラーの少なかったのは2.9回(3)、多かったのは7.8回(1)で、機種によって差が認められました。

なお、すべての機種でモニター全員が課題を達成できたのは「途中で洗濯物を追加する(課題3)」で、平均エラー回数も最も少なくなっていました。

テキスト ボックス: 平均エラー回数(課題別)グラフ

図2 操作課題の平均エラー回数(課題1,2,3,4,7)

 

◆ 機種によって差がある使用性 

洗濯乾燥機では、ドラムや洗濯槽の中に直接洗剤を入れるのではなく、専用の洗剤投入口が設けられていますが、「洗剤投入口の狭い(No.4、5)」、「洗剤を入れた後、トレーを持ち上げるタイプ(No.4)」は、モニターの評価は低くなりました。

グラフ

図3 洗剤の入れやすさ

注)1点・・悪い 2点・・やや悪い 3点・・普通 4点・・やや良い 5点・・良い

 

 

また、「途中で洗濯物を追加する(課題3)」ではドラム式の場合、ふたのロック解除が必要です。そのため、うず巻式に比べ、評価が低くなりました。

図4 洗濯物の追加のしやすさ

 

ただし、取扱説明書どおり操作すればよいNo.3は、うず巻式と変わらない評価が得られています。

取扱説明書に、課題の操作目的以外の操作説明が付加されているものなどは、勘違いを起こさせ、評価が低くなりました。

グラフ

4 洗濯物の追加のしやすさ

注)1点・・悪い 2点・・やや悪い 3点・・普通 4点・・やや良い 5点・・良い

 

 

「洗濯物の出し入れ」については、各社が工夫し、新しい製品が出るごとに改良が加えられています。上から洗濯物を出し入れする「うず巻式(No.4、5)」と「トップオープンドラム式(No.1)」は、横から出し入れする「ドラム式」より評価が高く、同じドラム式では入り口が広く、斜めになっているNo.2の方が評価は高くなりました。

グラフグラフ

図5 洗濯物の入れやすさ    図6 洗濯物の出しやすさ

注)1点・・悪い 2点・・やや悪い 3点・・普通 4点・・やや良い 5点・・良い

 

◆ メンテナンスの課題ではうず巻式で課題を達成できない人がいた 

メンテナンスの課題〔糸くずフィルターの掃除、乾燥フィルターの掃除〕を達成できなかった人は、延べ22人中うず巻式のNo.4で4人、No.5で7人いました。いずれも、糸くずフィルター、乾燥フィルターがそれぞれ2個あるうち、1個を掃除し忘れるというものです。これらのメンテナンスは機器の性能を十分に発揮させ、乾燥効率を低下させないためには大切であり、簡単に正しく掃除できる工夫が望まれます。

 

 

          ドラム式では洗剤の入れ過ぎに注意 

 

今回テストした洗濯乾燥機は洗剤の使用量の目安を検知して本体に表示するもの(No.1、3、4、5)と、ドラムの中の洗濯物の高さで洗剤量を決めるもの(No.2)がありますが、表示された洗剤量を参考にしない人が多くいました。その結果、一般的に洗剤量が少なくすむドラム式もうず巻式と同様に洗剤を入れてしまい、必要量より多目に入れる傾向がみられました。

 

グラフ

 

図7 モニターが実際に使用した洗剤量(表示量との割合)

 

【省エネルギー性などの品質性能】

◆ 洗浄性能には特に問題はみられなかった ◆

洗浄性能を人工汚染布とモニターが持参したワイシャツ、体操服、靴下の天然汚れで調べました。

人工汚染布の洗浄率は、ドラム式の方がうず巻式よりやや高い傾向がみられましたが、モニター11人の評価でみると、ドラム式とうず巻式では汚れの落ち具合に大きな差はみられず、実用上の問題はみられませんでした。

ただし、体操服や制服のシャツの袖口や襟汚れ、靴下の汚れが落ちていないという意見もあり、汚れがひどい場合は、従来の洗濯機同様に前処理をする必要があります。

グラフ

図8 洗浄率と汚れの落ち具合の評価

注)1点・・悪い 2点・・やや悪い 3点・・普通 4点・・やや良い 5点・・良い

 

                                                                                                                                                                                                                                             すべての衣類を洗濯から乾燥まで一連して行えるものではない 

衣類の種類によっては、仕上がり時に“しわ”がひどく残るため、洗濯乾燥を10回繰り返したワイシャツ、ズボン、タオル、スリップなどのしわの状態を21人のモニターに評価してもらいました。モニターによって差がありますが、タオル、スリップはしわが気にならないと評価され、ズボン、パジャマ、ワイシャツ、シャツブラウスは気になると評価されました。衣類の種類によっては、乾燥ムラ、寸法変化を生じたケースもありました。

洗濯乾燥機で、すべての衣類を洗濯から乾燥まで行うには無理があり、乾燥行程に入る前に衣類を仕分ける必要があります。仕分けは使用者の判断に委ねられますが、初めて扱う衣類が乾燥できるかどうかを判断するのは困難です。

メーカー各社も乾燥できない衣類を例示するなど注意を呼びかけていますが、今後はアパレル業界と連携して、衣類ごとに洗濯乾燥機の使用に適するかどうかの統一的な目安となる基準や表示を考える必要があるでしょう。

 

衣類写真  衣類写真

写真  しわが気になると評価された衣類(例)

 

◆ ランニングコストの大部分は乾燥ヒーターの電気代 ◆

乾燥容量の70%の衣類を洗濯乾燥させた時の消費電力量、使用水量、使用洗剤量から試算した洗濯乾燥1回当たりのランニングコストは、78.8円〜92.0円(平均86.1円)で、経費の大部分は乾燥時にヒーターを使用するための電気代でした。

 

グラフ

図9 洗濯乾燥1回当たりの費用

 

 脱水時、停止すれば、衣類の追加が必要な場合もあるドラム式 

うず巻式もドラム式も、中で衣類が片寄りうまく脱水ができないと、何度も水を入れて脱水をやり直すことがあります。トレーナーなどを1枚だけ洗濯する場合にはバランスが取りにくく、特にドラム式では脱水できずに停止した場合、1〜2点衣類を追加しなければなりません。このことは、取扱説明書には記載されていますが、経験して初めてその意味がわかる人も少なくありません。脱水時のバランス確保がメーカーの今後の課題といえます。

共働き世帯や高層集合住宅の増加などにより、場所をとらず乾燥までできる洗濯乾燥機の需要が今後増えると予想されます。乾燥性能や使用性など一層の向上が望まれます。