保健機能食品の利用実態と消費者意識
 
 健康維持や体質改善などを目的に保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品)を利用している人は多いようですが、消費者の認識や利用実態は明らかではありません。
 そこで、生活科学研究所では兵庫県消費者団体連絡協議会と共同でアンケート調査を実施しました。
(実施時期:平成16年8月、調査対象:兵庫県在住一般消費者1,289人)
 
保健機能食品とは
 健康についての情報があふれている今日、「健康食品」を利用する人が増加し、それに伴いトラブルも増えています。
 「健康食品」の定義が決められていなかったこともあり、厚生労働省は平成 13年4月、保健機能食品制度を発足させました。健康食品のうち、国が定めた安全性や有効性等の基準を満たしていれば「保健機能食品」と称することができ、 この「保健機能食品」はさらに「特定保健用食品」「栄養機能食品」に区分されています。

◆用途表示が認められている「特定保健用食品」
  「特定保健用食品」とは、健康の維持・増進や特定の保健の用途のために利用する食品です。国において、有効性や安全性などについての科学的根拠に関する審査を受け、許可された内容と右図のマークをつけ販売することができるものを指します。成分としては、オリゴ糖、乳酸菌、食物繊維、ペプチド、タンパク質、脂質、ミネラル等があり、食品としては、ヨーグルト、 サラダオイル、清涼飲料水、即席めん、クッキー、チョコレート、ガム等があります。
特定保健用食品マーク
◆栄養成分の補給・補完用の「栄養機能食品」 
 「栄養機能食品」とは、高齢化・食生活の乱れなどによって、通常の食生活を行うことが難しく、1日に必要な栄養成分を取れないような時に、栄養成分の補給・補完を目的に利用する食品です。
  カルシウム、鉄、マグネシウムなど5種類のミネラル類とビタミンA、B1、B2、C、Eなど12種類のビタミン類があります。
 
調査の結果
◆まだまだ低い「特定保健用食品」「栄養機能食品」の周知度 
  新聞広告、通販、折込チラシなどで健康増進目的の食品が様々な名称で販売されていますが、法的に定義づけられているのは、保健機能食品だけです。
  これらの名称の周知度を調べたところ、「栄養補助食品」91.8%、「サプリメント」90.8%、「健康補助食品」77.2%に比べて「特定保健用食品」は61.8%、「栄養機能食品」は52.7%と低く、一般消費者に浸透しているとは言い難い状況でした。

◆約4割の人が特定保健用食品を利用
 
  「保健機能食品」のうち「特定保健用食品」を現在利用している人は、41.3%でした。また、「保健機能食品」以外の「いわゆる健康食品」を利用している人も30.7%あり、「保健機能食品」に含まれない「いわゆる健康食品」の存在も大きいことがわかりました。なお、「栄養機能食品」を利用している人は 22.6%でした。 

図1 保健機能食品の利用頻度(計=1,289人)

◆「特定保健用食品」に「効果があった」と答えた人は「いわゆる健康食品」より少なかった
 「保健機能食品」は、国が認めた健康食品という意識があるため、特に「特定保健用食品」は「いわゆる健康食品」より、安全性、信頼性、利用効果への期待が大きい傾向がみられました。
  しかし、利用した人に効果を尋ねたところ、「特定保健用食品」が、「効果があった」もしくは「少し効果があった」と考えている人は27.8%で、栄養機能食品:37.1%、いわゆる健康食品:31.1%に比べて少ないという結果でした。
 その理由として、「特定保健用食品」は有効性が科学的に認められているため、宣伝の方法によっては、消費者が過剰な」期待を抱くことになり、実際にどの程度の効果が得られるのか、消費者に十分理解されていないことが考えられます。
図2 保健機能食品の利用効果
(特定保健用食品・計=738人、栄養機能食品・計=539人、いわゆる健康食・計=685人)

◆「特定保健用食品」では「おなかの調子を整える」食品、「栄養機能食品」では「カルシウム」を含む食品が多く利用されていた
 
 「特定保健用食品」で最も多く利用されていたのが「おなかの調子を整える」食品(404人)、次いで「コレステロールが高めの方へ」とする食品(271人)、以下「体脂肪が気になる方へ」とする食品(248人) 「ミネラルの吸収を助ける」食品(190人)の順に多く利用されていました。
図3 購入した特定保健用食品の種類(N=862人<複数回答>)
 
  「栄養機能食品」で最もよく利用されていたのが「カルシウム」を補う食品(313人)、次いで「ビタミンC」(246人)、以下「ビタミンE」(225人)、「鉄」(191人)、「ビタミンB1」(150人)の順に多く利用されていました。
図4 購入した栄養機能食品の種類(N=668人<複数回答>)

◆今後、保健機能食品を「利用したい」が「利用したくない」を少し上回った
 
  今後、「保健機能食品」を利用したいかについては、「積極的に利用したい」「利用したい」が合わせて40.0%。一方「あまり利用したくない」「利用したくない」が合わせて35.4%で、「利用したい」が「利用したくない」を4.6ポイント上回りました。利用したくない理由としては、「栄養分は普段の食事からとるべき」と考えている人が多いという結果でした。
図5 今後、保健機能食品を利用するか(計=1,289人)
 
◆1か月あたりの出費は約7割が5,000円以下
 一か月あたりの健康増進を目的とする食品代は、「3,000円以下」が29.6%で最も多く、次いで「3,001〜5,000円」が18.8%。これに「使っていない」の20.2%を合わせると、68.6%が5,000円以下でした。「50,001〜75,000円という高額な出費をしている人(2人)もいました。
図6 1ヶ月あたり、保健機能食品・いわゆる健康食品に使う金額(計=1,289人)
 
◆約8割が「注意表示」を読んでいたが「読みやすい」と答えたのは2割弱  
  「保健機能食品」は、「注意表示」を正しく理解して利用することが大切です。表示を「読んでいる」「時々読んでいる」を合わせると79.2%の人が読んではいるものの、読みやすさについては「概して読みやすい」は 23.0%にとどまっています。一方、61.6%が「概して読みにくい」と考えており、わかりやすい表示の仕方が、課題となっています。
 
バランスのとれた日常的な食事が基本
保健機能食品への正しい理解を
消費者は、
  • 健康的な食生活の基本は日常のバランスのとれた食事にあること
  • 過度に頼らず、必要なときに必要な分だけ摂取すること(場合によっては専門家に相談する)
を基本に据えることが大切です。
「保健機能食品はあくまでも食品であり、医薬品のような効果は期待できない」ことなど、保健機能食品等に対して正しい理解を深め、過大な期待を抱かない心構えが必要です。

 
保健機能食品制度の改正
 「保健機能食品制度」は、平成17年1月31日付で改正されました。(経過措置期間は平成18年3月31日)
特定保健用食品制度の見直し
従来の「特定保健用食品」に加え、
  1. 条件付き特定保健用食品制度の創設
  2. 特定保健用食品(規格基準型)制度の創設
  3. 疾病リスク低減表示の容認
栄養機能食品制度の見直し
  1. 大臣が定める基準に係る栄養成分以外の成分の機能の表示の禁止
  2. 栄養成分名の表示の義務化
その他
 保健機能食品に対し「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の表示の義務付け 
 詳しくは、厚生労働省ホームページより『「健康食品」に係る制度の見直しについて(医薬食品局通知)』参照