高齢者の台所環境
 高齢者が自分で食事を作ることは、元気で生きがいのある生活につながるといわれています。そこで、高齢者が調理しやすい台所について、アンケート調査を実施しました。また、回答者から8戸を選んで、夏季の温湿度などの環境について実態調査を行いました。
 アンケート調査は平成16年7月に、県内の高齢者(阪神シニアカレッジ受講生)と一般成人(当研究所講座修了生)を対象に実施し、472人から回答を得ました。(回収率40.8%)
 
安全性・明るさは満足
  高齢者にとって望ましい台所環境のあり方を考えるため、デザイン・外観、安全性、使用性(広さ・配置)、明るさ、騒音、温湿度(防暑・防寒)について、現在の台所環境をどう思っているかの「満足度」を、それぞれ−2〜2(−2、−1、0、1、2)の5段階で、また、どの程度重視しているかの「重要度」を1〜5(1、2、3、4、5)の5段階で評価してもらいました。
  「満足度」の評価で、平均値が最も高かったのは、「明るさ」で0.84、次に「安全性」0.67、「湿気(壁面にカビが生えないこと)」0.61でした。逆に、低かったのは、「夏の暑さ」−0.07、「ゴミ処理のしやすさ」0.12、「換気扇の作動音」0.13、「他室との温度差」0.16、「冬の寒さ」0.18でした。
  防暑・防寒などの温熱環境についての「満足度」は低くなっていますが、「重要度」も比較的低かったことから、温熱環境に関する日常の関心の薄さがうかがえます。一方、「安全性」「機能性・使用性」などの「重要度」の平均値は高くなっています。
 
温熱環境の改善が望まれる
  各評価項目の「満足度」に「重要度」を掛け合わせたものを「適合度」として表してみました。「重要度」が高いにもかかわらず「適合度」の低い項目は、改善が必要ということなります。
  「適合度」が最も低かったのは、「防暑」で、これは「満足度」が低かったことによります。
  実際にモニター家庭の夏季の室温測定をした結果でも、調理中は長時間にわたって30℃を超えているケースがあり、熱中症などの発生が心配されます。また、防寒の対策がされていない台所では冬は寒く、調理をするのがおっくうになりがちです。今後は、台所環境において設計段階から温湿度環境を重視していくという意識が必要と思われます。
 
とくに高齢者単身家庭に改善が必要
  家族に高齢者がいる「高齢家族」を、「高齢者単身」「高齢者夫婦」「若・中高年層との同居」に分けて「適合度」をみると、「高齢者単身」の「適合度」が特に低く、改善の必要性が高いと考えられます。

図 家族形態別台所環境適合度