突然、いすの脚が折れた
 「座っていたいすの脚が破損し、転倒した」という苦情が2件寄せられました。1つは回転式学習いす。もう1つは折り畳み式アルミ製パイプいすです。いずれも軽い打撲ですみましたが、大ケガにつながる恐れもあります。 そこで、生活科学研究所で原因究明テストを実施しました。

1.回転式学習いす
 
 「背もたれを前にして座り、パソコンを操作していたところ、5本の脚のうち1本が折れた」
                             (県立姫路生活科学センター受付)
 JIS(日本工業規格)に基づく脚の強度テストの結果では、基準に適合していました。
しかし、1本の脚に53kgf(キログラム重)の静荷重が加わった時には、事故品と同様に破損しました。座面が回転することから、通常は1本の脚だけに体重がかかることはありませんが、このいすの場合は、リング状の足掛けに足をかけると、座面が回転しなくなる構造であったため、偏った姿勢でいすが使用されたことにより、1本の脚に使用者のほぼ全体重(57kgf)がかかって破損した可能性があります。

2.折り畳み式アルミ製パイプいす

 「座ったまま頭上で手を組んで、伸びをしたところ、背もたれパイプが、座面を支える
ビス穴部分で折損し、脚のパイプも折れ曲がった」
                                  (丹波の森公苑受付)
 
  伸びをした時に体重が背もたれにかかることを想定し、同等新品を用いて、背もたれの上部に静荷重をかけていったところ、27kgfの荷重で、事故品と同じ箇所が破損しました。しかし、相談者とほぼ同じ体格の人が伸びをした場合、背もたれには最大でも15kgfしかかからなかったことから、このいすの場合は、繰り返しの使用によって、最も負荷のかかりやすい箇所(応力が集中しやすいビス穴部分)に金属疲労が生じ、破損につながったと考えられます。
 このいすは、持ち運びやすさを重視して軽量につくられていたため、常設用に比べ耐久強度が劣っていたと考えられます。
 なお、このような家庭用折り畳みいすにはJISのような規格がありません。

予想される使い方に耐えられる強度が必要

 一般的に、いすは、人が座ったときに荷重が分散するように設計されていますが、使用方法や条件によっては、荷重が一部分に集中してしまうことも考えられます。
 破損すれば、大ケガにつながる恐れもあることから、メーカーには、予想される様々な使い方にも耐えられる安全設計が求められます。