スプレー缶(エアゾール製品)の破裂
 
 日常生活で何気なく使用している殺虫剤、ヘアケア用品や制汗剤などのスプレー製品ですが、自動車用消臭スプレーの破裂事故の相談が寄せられました。幸い人身事故には至りませんでしたが、乗用車のガラスが大きく破損しました。スプレー缶の破裂や爆発事故は全国的にも起こっていることから、生活科学研究所で原因を調べました。
   
  乗用車内でスプレー缶が破裂
   「自動車内に置いていた自動車用消臭スプレー缶が突然破裂した」
(西播磨生活科学センター受付)
  相談者の話では、7月中旬の午後、1時間ほど屋外に駐車して戻ってみると、車内後部のリアガラスの前に置いていた消臭スプレー缶が破裂し、フロントガラスとリアガラスの両方が破損していたということです。
写真1フロントガラス(車内から) 写真2 リアガラス(車内から)
  缶の内部圧力の上昇で一気に破裂
  この製品は、缶体の底部と本体の接合部を重ねて折り曲げて圧着することにより接合されていますが、苦情品の接合部はほぼ均一に外側に向かって押し広げられていました。また、缶体の腐食や肉厚等の異常は認められず、特に弱い箇所も確認できませんでした。破損した外観の状況から、缶の内圧の上昇によって、本体と底部の接合部が一気に分離し、破裂の勢いで飛んだスプレー缶がフロントガラスなどに当たり破損させたと思われます。
  原因は炎天下の車内温度の上昇による
 事故当日は快晴で、西播磨地方の最高気温は33.4℃でした。炎天下の車内温度については、国民生活センターの調査によると「最高気温32.4℃では車内温度は60℃近くまで、特に直射日光の当るダッシュボードは87℃まで上昇する」というデータがあります。
このことから、「車内の直射日光の当たるところにスプレー缶を放置していたため、缶体の温度が高温になり、内部圧力が上昇して、破裂に至った」と推定されます。
苦情品には「破裂の危険があるため、40℃以上になる所に置かないこと」等の表示がありますが、用途が自動車用除菌剤、消臭剤であることから、車内に保管することは十分考えられます。事業者は、商品設計やより危険性を明確に認識できるような表示についての配慮が必要です。
火気と高温に注意
スプレー缶はLPガス等の可燃性の噴射剤が用いられており、容器の中は高圧になっています。保管方法や廃棄、使用方法などを誤ると、破裂や爆発などが生じる危険性があります。使用時には@直射日光のあたる場所や高温になる場所に置かない。A噴射ガスに引火する場合があるので、火気の近くで使用しない。B廃棄の際は、必ず中身を使い切り、火気のない風通しのよい屋外でガス抜きをする。C缶が錆びると破裂することがあるので、湿気の多いところでは保管しない、などの注意が必要です。
写真3 破裂した容器上部  写真4 破裂した容器底部