海外旅行のキャンセル
【事例】
 1か月前に、バンコク5日間の旅行を申し込みました。ところが、出発の3日前に旅行先に非常事態宣言が
出されたため解約を申し出たところ、旅行会社から「自己都合による解約なので、取消料が必要」と告げられましたが、納得できません。
                                                   (40歳代 男性)
                                                            
【アドバイス】
 この旅行は大手旅行会社が別会社の企画した旅行を販売する募集型企画旅行です。旅行業約款では「天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じ た場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき」は取消料を支払うことなく解約できることになっています。
 そこで、当センターから旅行会社に@非常事態宣言が出たにもかかわらず解約取消料が必要な場合があるということは相談者を含め消費者には認識しにくいことA契約書にもその具体的記載がされていないことB事前の説明も十分でなかったことなどの問題点を指摘しました。しかし、旅行会社は相談者に対する説明不足は認めたものの、外務省が提供する海外危険情報には4つのランク(@十分注意してください。A渡航の是非を検討してください。B渡航の延期をおすすめします。C避難を勧告 します。)があり、今回は危険度が最も低いランクの『十分注意してください』であることを挙げ、「企画会 社が現地調査をした結果、旅行を安全に催行できると判断しているため、自己都合による解約になる。」との回答でした。交渉を重ねましたが、相談者が既に支払っていた旅行代金の二〇%にあたる取消料は返金されませんでした。
 旅行会社はトラブルを防ぐため、事前に非常時の取消料の十分な説明をするとともに、契約書にも取消料が必要な場合の具体的な例示をしてほしいものです。今後、海外旅行地で暴動などがおこり非常事態宣言が出されることも考えられます。旅行会社と消費者では危険度に対する認識に差があります。旅行に不安を抱く消費者には取消料なく解約できるように旅行業界で取り組む必要があるのではないでしょうか。
 なお、今回のようなトラブルを避けるためには、保険会社から出ている海外旅行保険で、キャンセル費用特約等をつけることもできます。その場合には出国中止に伴う費用が補償されますが、どのような補償が必要なのかをよく考え、旅行申込時に事前に旅行会社等にその内容をよく確認しましょう。

                                             (淡路生活科学センター)
                                       婦人兵庫 21年2月号登載分より