兵庫県立生活科学研究所                               テストリサーチ
         高齢者の居住環境-バリアフリー環境の視点から-

高齢者が健康で快適なくらしを送るには、居住環境をバリアフリー(障壁をなくす)化する必要があります。段差の解消や手すりの設置などの設備面に加え、音、光、熱、空気など総合的な物理環境のバリアフリー化も検討するため、調査を実施しました

 アンケート調査は平成14年7月から9月に、県内の高齢者大学受講生と県立生活科学研究所テスター養成講座修了生、県内の内閣府国民生活モニターを対象に実施し、606人から回答を得ました。(回収率 51.7%)

回答者の年齢区分
若・中年層 (54歳以下) 168人(27.7%)
中高年層  (65〜64歳) 137人 (22.6%)
前期高齢者 (65〜74歳) 250人(41.3%)
後期高齢者 (75歳以上) 51人( 8.4%)

 

今後重要視するのは「風通しがよいこと」

現在、住んでいる住宅の室内環境の「満足度」と、今後のあり方に関する「重要度」を、バリアフリー・音環境・光環境・温熱環境・湿気環境、空気(汚染)、スペースの7指標58項目について評価してもらいました。

5段階評価の平均点で、満足度が低かったのは「浴室が車いすでも使用でき、介護者も介護できる空間があること」「階段が急でなく昇降しやすいこと」「トイレに介護をする充分な広さがあること」などで、これらは、住宅の広さ(スペース)にも関係している項目です。

また、「夏に台所が暑くないこと」の満足度も低く、これは台所の熱環境が充分に考慮されていないことが要因となっていると思われます。

今後重要視すること(重要度)では、「風通しがよいこと」が最も高く、これは、「押し入れにカビ臭がしないこと」「壁面にカビがはえないこと」「湿気が多くないこと」など、他の重要度が高い項目を網羅的に実現できる可能性を含んでいるからではないかと推察されます。

後期高齢者の「適合度」に課題

各評価項目の「満足度」に「重要度」を掛け合わせたものを「適合度」としてみました。値が小さいほど「重要度」が高いにもかかわらず「満足度」の低い、即ち課題となる項目ことを示しています。

7指標別では、バリアフリーと温熱環境に「適合度」が低く、特に後期高齢者で低くなっているのは問題です。
 バリアフリー施工についてみると、「手すりの設置」「段差の解消」「防犯安全装置」「救急通報装置」の希望が多く見られています。若い時から様々な面のバリアフリー化を検討しておく必要があるでしょう。

     
図 年齢層別 7指標適合度平均値

        

 

高齢になるほど機器にたよらず暑さをしのぐ工夫

高齢になるほど、快適な居住環境を得るため、様々な工夫を実行している割合が高くなっており、特に、夏の暑い時には「打ち水をする」「すだれやよしずを使う」といった夏を涼しく過ごす昔ながらの工夫を後期高齢者の多くが実行していました。逆に、エアコン・クーラーの使用率は、「身体に悪い」との理由から年齢が高くなるほど減少していました。